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2006年1月 9日 (月)

なぜ今『資本論』講座か――今年も参加

東京学習会議の『資本論』講座、昨年に続いて今年も受講することにしました。昨日(8日)が第1回の講座でした。…と書くと、「何で今時、『資本論』なの?」と首を傾げられる方がかなりお見えだと思いますが、世界の現状を見ると、今、マルクスとエンゲルスの考え方には、傾ける必要があるのは首よりもむしろ耳なのではないかと思うのです。

例えば、貧富の格差の拡大です。国内では、「市場原理主義」「利潤第一主義」の嵐が吹き荒れ、「勝ち組・負け組」という言葉がさかんに使われていることに見られるように、ホリ●モンのようなごく少数の「ヒルズ族」が大手を振ってのし歩く一方、生活保護や就学援助の受給者数が急増しているのをはじめ貧困層が大幅に拡大しています。「毎日」が昨年末から「格差社会」を問う連載を始めていますが、格差の拡大が将来、日本社会の存立を揺るがしかねないという指摘が幅広くされていますね。世界的にも、南北問題を克服する必要性が長年叫ばれていますが、解決に向けた取り組みは多難な現状にありますね。

また、景気が「回復傾向」と報じられ、確かに大企業は空前の利益をあげているわけですが、生産される商品の最終的な需要元となる消費需要は伸び悩んでいる、あるいは後退気味であることも指摘されています。

企業が市場競争での“強制”によって、際限のない利潤追求に走るあまり、安全面や環境への配慮を後景に追いやって、重大な事件さえ引き起こしてしまうことは、建築や鉄道をめぐる最近の事件、公害・環境問題などで繰り返されています。地球環境問題では、CO2排出削減を義務付ける「京都議定書」をめぐり、アメリカが「企業活動が制約される」として、義務付けに頑強に抵抗したことがよく知られています。

こうした問題が繰り返し起こり、深刻さを増していく背景に何があるのか、そして大局的にはどのような方向に向かっていくのか。突き詰めて考えるうえでは、やはり最も徹底的に資本主義研究を行ったマルクス、エンゲルスの考え方を参考にすることが必要なのではないか――、と思ったわけなのです。マルクスは『資本論』第1巻の初版序文で、同書の目的を“資本主義社会の経済的運動法則の暴露”とか、“問題は法則による社会の発展の度合いの高低ではなく、法則そのものだ”と語っています。

マルクス、エンゲルスは研究を通じて、社会には自然と同様、人間の意識・思惑から独立した客観的な法則があり、「大づかみにいって」利潤第一主義の資本主義社会の次には、共同社会に移行するだろうと考えました。この共同社会の特質をどう規定するかについては、20世紀前半以降、生産物の分配の仕方を基準にして「低い段階」「高い段階」に区分する考えが広くありました。しかし21世紀に入って、共同社会の特徴づけはこのような分配の仕方(「労働に応じて」とか「必要に応じて」とかの)による規定が中心なのではなく、「主要な生産手段の所有・管理・運営を個別の企業から、社会の手に移すことこそが中心なのだ」として、いわゆる「生産手段の社会化」を中心にすえ直し、それによって労働時間を抜本的に短縮したり、生産の推進力を利潤第一主義から解放する、とした主張が広まってきています。その社会化の範囲や具体的あり方、例えば、いわゆる市場経済との結びつき方などについての本格的な探求は、今後の課題となっていくでしょうが。

ちなみに一言しておきますと、私は、旧ソ連・東欧圏で行われた、また北朝鮮で行われている「国有化」や「統制化」は、共同社会における「生産手段の社会化」とは“似て非なる”もの、というよりは異質なものだと思っています。中国の現状と今後についての規定づけは、中国自身も混乱状態をへて、かなり息の長いスタンスでの社会建設にようやく取り組み始めたところであり、慎重な見極め、検討が必要なように感じています。

これらの問題について考えるうえでは、紙屋研究所さんの「共産主義という生き方」が参考になると思います。

かなり話がそれましたが、そんなわけで、現代社会の客観的法則性を探求する方法論を詳しく、深く勉強したい、と思ったわけなのですね。【13日に追記:念のために一言しますが、私は『資本論』で解き明かされた文言が一字一句現代も適用できると思っているわけではありません。自然や社会が発展するごとに、理論も発展します。ただ、そこで打ち出された方法論は有効だと思うのです】

で、第1回は、そのマルクス、エンゲルスの問題意識を端的にのべた「序文」についての講義だったわけです。講師は、一橋大学名誉教授の浜林正夫先生でした。学生時代、サークルで主催した講演会で講師に招いたことがあって以来のお顔拝見でした。ここまで書いただけで、相当長くなってしまったので、続きはまたそのうち。【追記:こちらで書きました】

【注記:『資本論』講座についての記事は、全て「学問・資格」カテゴリに分類しています】

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コメント

大変なことになってるなぁ

投稿: うーん | 2006年1月16日 (月) 午後 11時14分

はじめまして。今月のはじめにトラックバックをいただいていたのに、気づかずに過ぎてしまいました・・・すいません^^;
こちらも、トラックバックお願いします。

投稿: | 2006年5月27日 (土) 午後 10時36分

洋さん。初めまして。
こちらこそ、よろしくお願いします。
東京では、こんな取り組みもあるわけですが、もし何かの参考になるようでしたら、今後もご覧いただき、ご意見などもいただければ幸いです。

投稿: かわうそ | 2006年5月30日 (火) 午後 08時58分

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