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2006年2月 3日 (金)

「首相『格差悪くない』 改革批判に反論」(NIKKEI NET)

小泉「構造改革」による社会的格差の拡大が問題となり、通常国会でも大きな争点となっていますが、小泉首相はこれまで「格差の拡大は確認されていない」と言っていましたが、ついに「格差は悪くない」とまで言ってのけました。

「首相『格差悪くない』 改革批判に反論」(NIKKEI NET)

 小泉純一郎首相は1日の参院予算委員会で「格差が出ることが悪いとは思わない」と述べ、社会の格差が広がっているとの見方に真正面から反論した。ライブドア事件をきっかけに強まる「勝ち組」批判も「成功者をねたんだり、能力ある者の足を引っ張ったりする風潮を慎まないと社会は発展しない」とばっさり。格差論争に一段と火が付きそうだ。
 この日の質疑では与野党とも「格差拡大」を懸念する発言が相次いだ。自民党の市川一朗氏は「改革一本やりでいいのか」と構造改革路線に疑問を挟んだ。
 首相は「どの時代にも成功する人、しない人はいる。負け組にチャンスをたくさん提供する社会が小泉改革の進む道」「今までが悪平等だった」などと言い返した。
 さらに「影ばっかりだったところにようやく光が出てきた。光が見え出すと影のことを言い出す」と格差批判を一蹴(いっしゅう)した。 (21:01)

経済的格差の拡大については、以前から多くの統計資料で明らかにされてきましたが、政府は先月の月例経済報告に関する関係閣僚会議の資料(pdfファイル)で、「主に高齢化と世帯規模の縮小の影響」とする「見かけ上」のものだとしていました。しかし、事実として格差が広がっていることは、生活保護や就学援助の受給世帯数が大きく増加していることからだけでなく、世帯人員を調整したOECDの国際比較資料(つまりこの比較を見るならば「世帯規模の縮小」ということは言えなくなるわけです)などによっても、明らかなのです。

政府が格差拡大は「見かけ上」のものだと強調してきたことは、それ自体、格差の拡大が好ましくないという認識に立っていたからこそであることを示しているといえます。格差の拡大が「悪いことではない」のであれば、拡大の事実を認めても、痛くも痒くもないのですから。

ところが、小泉首相は、ついにその域に踏み込んでしまったのですね。それだけでなく、格差拡大に対する批判を「成功者へのねたみ」とか「能力ある者の足を引っ張る風潮」と切って捨てたのは、小泉首相としてはある意味「やはりな」と思うわけですが、そういう立場を取ってしまえば、格差の是正は必要ないものとなり、したがって社会保障をはじめ、所得を再分配し格差を是正する施策は全く無意味な、少なくとも意義の薄い施策ということになると思うのですが、この点はどうするのでしょうか。実際、年金の切り下げや医療費の負担増もバシバシやってきましたからね。

それから、「負け組にチャンスをたくさん提供する」といいましたけど、そんなもの、大してやっちゃいないじゃないの。実際、以前にもこのサイトで書いたことがありますが、労働法制の規制緩和を受けて、正規雇用は大きく減少する一方、パート・アルバイト、派遣などの非正規・不安定雇用は大きく増大し、いまや全体の三分の一、若い世代になれば約半数が非正規雇用となっています。また、企業のリストラも進みました。果たして、リストラされた人や非正規雇用が正規雇用になる道がどれほど開かれているのでしょうか。開いてきたのでしょうか。確かに「負け組」とされた人のうち、はい上がることに成功した方もいるでしょう。しかし、「負け組」の大多数は、はい上がれないままです。この人たちが出るのはやむを得ないこと、いや当然なことなのでしょうか。

非正規雇用のもとに置かれた若い人たちが大変な目にあっていることは、多くのブログやテレビの報道・ドキュメント番組でも広く指摘されていることなので、省略しますが、こういうのを見聞きするたびに、私は、マルクスが『資本論』第1巻の終わりの方で行った、次の言葉を思い出さざるを得ないのです。

「一方の極における富の蓄積は、同時に、その対極における、すなわち自分自身の生産物を資本として生産する階級の側における、貧困、労働苦、奴隷状態、無知、野蛮化、および道徳的堕落の蓄積である」(『資本論』第1巻第23章)

それから、もう一つ。“市場原理主義マンセー”な方は、口を開けば「結果の平等より機会の平等」だとか「公正な競争ができるようになる」だとか、おっしゃるわけですが、それならば、5年近く前に明らかになったニュースを思い出してみたいのです。それは市場原理主義のイデオロークの一人、竹中平蔵氏(あの金融・経済財政担当相をへて、現在は総務相のアノ方です)が日本マクドナルドの未公開株をもらっていたというニュースです(保坂展人衆院議員=社民党=が国会に提出した質問主意書答弁)。あのマック(私は滅多に行かないのですが)を運営する超優良企業の未公開株なんて、公開したらドーンと値上がりしないわけがない(実際したわけですが)、そういうものを手に入れられてしまう方々は、果たして「機会の平等」「公正な競争」がどこに働いていたのかと。

ちょっと脇道の話題まで持ち出しましたが、「格差の拡大」を否定したいばかりに、「悪いことではない」などと言い出したら、それこそ所得再分配をする意味はなくなりますし、つまり、「政治」そのものの意味がなくなることになると思うのです。その意味で、今度の首相の一連の発言は、これまで以上に重大な発言だと思うわけですが、いかがでしょうか?

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コメント

どもども。

あいかわらずの発言。

死人が出てるよ。。。。

投稿: ばぶ | 2006年2月 4日 (土) 午前 02時01分

はじめまして。華氏451度と言います。TBありがとうございました。

> 今度の首相の一連の発言は、これまで以上に重大な発言だと思うわけですが、いかがでしょうか?

言われる通りだと思います。冗談ではありませんね。彼らは「生きることは戦いであり、それに負けたヤツらはドブにに落ちたままでいても当然。なんでわざわざ、手を差し伸べてやる必要があるんだ」と思っているのです……。

投稿: 華氏451度 | 2006年2月 6日 (月) 午後 10時37分

ばぶさん、華氏451度さん、コメント&TBをありがとうございます。

政府・与党は6日の国会でも「経済の拡大が格差を縮める」などと「反論」したそうですね。経済の「拡大」なるものの実態が、一部の巨大企業が高収益をあげる一方で、低・中所得者は可処分所得の推移も低迷しているという構造になっていることは、広く指摘されています。これじゃ収益どころか“収奪”じゃないか、という状態ですわね。

「貧困」をとらえる場合、所得・生活水準の絶対的な上昇・低下という面とともに、社会生産力の発展度から見て相対的にどうなのか、という両面からとらえる必要があると思います。格差問題ではとくに、後者の問題がクローズアップされています。

もちろん、前者の問題も大事だと思います。5日から「朝日」も東京・板橋区の高島平団地を舞台に、格差を問う連載を始めましたが、大変な実態ですよね。連載は始まったばかりで、今後どういう展開になるかは知りませんが、これが小泉的「構造改革」「規制緩和」路線が源流となっていること(「的」というのは、この路線は小泉首相が始めたというわけではないからです)をきちんと指摘していってほしいです。

投稿: かわうそ | 2006年2月 7日 (火) 午後 01時16分

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