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2006年5月22日 (月)

生産過程の分析に入りました①

東京学習会議の『資本論』講座は、14日に5月期の学習会がありました。これまでは流通過程で商品と貨幣の分析、さらに資本の登場について考察を進めてきたわけですが(前回はこちら)、今回からいよいよ生産過程の分析に突入し、資本がどのようにして増殖するかについて考えていきます。(『資本論』第1巻では、商品を生産する産業資本について考察します。現代で多く見られる「商業資本」や、貨幣を他人に貸して利子を取る「利子生み資本」は、第1巻では基本的に捨象されており、第3巻で考察します)

まず、自分の所有する労働力を資本家に販売した労働者は、生産過程に入り、資本家の管理の下で労働することになります。この過程は、マルクスが『資本論』で書いているように、

労働力の使用は労働そのものである。労働力の買い手は、その売り手を労働させることにより、労働力を消費する。労働力の売り手は、労働することによって、“現実に”自己を発現する労働力、労働者となる」(第5章「労働過程と価値増殖過程」)

わけです。

労働は人間が自然(ここでは人間の外にある世界といっていいでしょう)、そして自然素材と相対して働きかけ、それらを直接的、または間接的に自分自身の生活に役立たせるため(つまり目的意識的に、「合目的的」に)、自分の肉体的・精神的能力を発揮して、その自然を変化させる行為です。つまり、この過程(労働過程)は、「労働そのもの」が「労働対象」に対して、「労働手段」をもって働きかけ、変化させる過程です。(労働対象と労働手段を総称して「生産手段」といいます)

ここでマルクスの経済学と、それ以前のスミスやリカードウの経済学(さらに現代にいたる「近代経済学」の諸派)との決定的な違いについて、一言する必要があります。それは、労働者が資本家に売るのは「労働力」であって、「労働」ではない、ということです。一見、「んな細かいこと言わんでも、別にどっちでもええやん」と思ってしまいがちなのですが、ここには実は重要な問題があるのです。

というのは、①スミスやリカードウは「労働」と「労働力」とを区別しておらず、「近代経済学」では単なる“投入要素の一つ”にしてしまっているのですが、「労働」は「労働力」と「生産手段」が結合して初めて可能になります。生産手段を資本家が所有し、労働者が「人格的に自由」な状態であるもとでは、労働者は「労働力」を販売することはできますが、「労働」は自分のものではないので販売することができないからです。また、②後々に明らかにされますが、労働者が資本家に売る商品を「労働」だととらえる考え方では、剰余価値がどのようにして生じるかを明らかにできなくなるのです。

この点について、エンゲルスは『資本論』第2巻の序文で、

「彼(マルクス)は貨幣の資本への転化を研究して、この転化が労働力の売買にもとづくことを証明した。彼は、ここで、労働の代わりに労働力を、価値創造的属性を持ってくることによって、リカードウ学派の破滅のもとになった諸困難の一つ、すなわち、資本と労働との相互交換を労働による価値規定というリカードウ流の法則と調和させることの不可能性を、一挙に解決した」

とのべています。(エンゲルスのこの序文は、『資本論』第1巻が何を明らかにしたのかについて、大変簡潔に概括しているので、興味を持たれた方はぜひお読みください)

この労働過程は、どんな経済社会でも共通して行われ、生産物(使用価値)を生み出すのですが、この過程が「資本家が労働者の労働力を買って消費する」、つまり、資本主義(資本制)的に行われる場合は、①労働者は、自分の労働力を購入した資本家の指揮下で労働する②生産物は、生産手段を所有し労働力を購入した資本家のものとなる――という特徴を持つようになります。

この資本主義的に行われる労働過程で、剰余価値の形成の仕組みが明らかにされるのですが、ここまででもうかなり長くなっていますので、続きはまた近いうちに。

ただここで一言だけしますと、明石先生は、労働過程における人間と自然との関係を歴史的な発展のなかでとらえること、自然自体についても人間との歴史的・社会的関係で形成されてきていることを明確に区別して理解することが、「環境問題について考えるうえで重要な鍵となる」という趣旨のことをおっしゃっていました。講座では時間がなくて、この点について詳しくお聞きすることができなかったのが残念です。(6月度の講座は、私は仕事で行けないんだよなあ)

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