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2006年6月30日 (金)

公務員のビラ配布と「政治的中立性」

休日に個人的に政治ビラを配った公務員を、「国家公務員法違反だ」として逮捕した事件で、罰金10万円、執行猶予2年という判決が出されました。

「ビラ配布:社保庁職員に罰金10万円の猶予刑 東京地裁」(MSN毎日インタラクティブ)

 03年11月の衆院選前に共産党機関紙などを配布したとして国家公務員法(政治的行為の制限)違反に問われた社会保険庁職員、堀越明男被告(52)に対し、東京地裁は29日、罰金10万円、執行猶予2年(求刑・罰金10万円)を言い渡した。毛利晴光裁判長は「公務員の政治的中立性を著しく損ねた」と指摘しつつ「休日に職務と関係なく行った行為で、直ちに行政の中立性や国民の信頼を侵害していない」と執行猶予の理由を説明した。
 公判で弁護側は「違法な捜査で公訴無効。公務員の政治的行為の制限は憲法違反」などと主張した。判決は、共産党事務所への被告の立ち入り状況のビデオ撮影は違法としたが、捜査全体としては適法と認定。同様の事例で有罪が確定した「猿払事件」の最高裁判決(74年)を踏襲し「行政の中立性と国民の信頼を確保するため公務員の政治的行為の禁止は正当」と判断した。
 判決によると、堀越被告は03年10~11月、東京都中央区のマンションなどの郵便受け計126カ所に「しんぶん赤旗号外」などを入れて政治的行為を行った。
 国家公務員の政治的行為を巡っては、厚生労働省課長補佐が05年9月に在宅起訴され、東京地裁で無罪を主張して公判中だ。【佐藤敬一】

しかし、報道で判決を知る限り、私にはどうにも解せない判決です。上の記事でも紹介されていますが、休日のビラ配布について、「公務員の政治的中立性を著しく損ねた」として罰金を命じながら、その一方で「行政の中立性を侵害していない」と、結局は執行猶予としたのは、全く矛盾しているとしかいいようがありません。どっちやのん? さらに、法律にかかわる業界にいる友人によると、罰金刑に執行猶予をつけるのは、きわめて異例なのだそうです。正面から違法だといいきれなかったという結果なのではないのでしょうか。

また、別の報道では、警察が堀越氏を長期間にわたり尾行して、ひそかにビデオ撮影していたことについても指摘していました。まるでストーカー

「政党機関紙を配布した社保庁職員に有罪判決 東京地裁」(asahi.com)

 裁判では、警視庁公安部の捜査員が堀越事務官を長期間尾行し、ビデオ撮影したことも明らかになった。判決は、配布と関連の薄い党事務所への出入りについては「犯罪を立証する上で重要とは言えず、撮影は限度を超えている」と述べ、違法と指摘した。

立件のうえで中心的な“証拠”となったであろう長期間のストーカー的撮影を違法としながら、捜査全体を適法とし、有罪判決を言い渡したわけですが、有罪となるのであれば、その行為を撮影しながら、その時点で逮捕はおろか、警告もしなかった警察は、違法な「泳がせ捜査」をしたことになるのではないでしょうか。

さらに激しく疑問を感じるのは、堀越氏が「国家公務員法違反」で有罪であるなら、特定郵便局長会など官僚組織を舞台に展開した自民党のぐるみ選挙はなぜ、同法違反で立件されていないのでしょうか? 国家公務員法違反は、1970年代の「猿払事件」以来なのだそうですが、ちょうど5年前、“小泉旋風”が吹き荒れた2001年参院選で、自民党の高祖憲治候補(当選後、辞職)を当選させるため、郵政ぐるみ選挙が行われた事件では、近畿郵政局長ら16人が逮捕されましたが、このなかには国家公務員法違反で逮捕された人は1人もいませんでした。「公務員の政治的中立性を侵害」というなら、局長が職務・職権を利用した高祖事件と、末端の一職員が休日に自宅近くでビラをまいた堀越事件と、どちらが重大な侵害かは、対比するまでもないと思います。

それから、いま自民党総裁選に出馬の意向を表明している麻生太郎外相は、総務相時代の2003年12月、自民党から立候補を予定した総務省OBの政治資金パーティーで、「総務省あげて当選させるべく全力をあげてがんばりたい」とあいさつしたそうです。翌年3月になって、「少々発言として穏当を欠いている」と認めたとのことですが(これを報じた「しんぶん赤旗」04年3月17日付)、これらは、なぜ国家公務員法違反として問われないのでしょうか?

これらのことを合わせて考えてみると、今回の堀越氏の行為について、公務員の「政治的中立性を著しく侵害」としたのは、全くの口実で、その実態はビラの配布を封じることで共産党に打撃を与えることにあった、つまり政治的な弾圧だったのではないかと考えざるをえないのです。

もっと恐ろしいのは、この先だと思います。ビラ配布を封じるだけでなく、さらにゆくゆくは「共謀罪」も成立させれば、実行にも準備にも至らない段階でも「処罰」対象にするわけで、その過程で警察が、今回の判決ですら「違法」だとした、ストーカーまがいの長期間の尾行や「泳がせ捜査」を使って「立件」しようとするだろうことは、想像に難くないわけです。そこには「警察監視国家」が待っています。有罪判決は独り共産党だけの問題ではない、重大な問題だと思うのです。

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» 既に戦争前夜? [TRIAL AND ERROR(underwater mix)]
 政治ビラをまいた社会保険庁職員を、国家公務員法違反だと訴えた事件の地裁判決が出た。かわうそ実記さんが詳細にこの件を論じているが、判決内容に立ち入れば立ち入るほど「不当判決」の四文字熟語が濃く浮かび上がってくる。  「... [続きを読む]

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