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2006年8月 4日 (金)

「過労死大国」

20060718134537何か他事をしている間に、半月近く前の話になってしまいましたが、毎日新聞社発行の週刊誌『エコノミスト』7月25日号が「過労死大国」という特集を組みました。毎日新聞を含む大手商業メディアが、「規制緩和」「構造改革」路線マンセー! と大絶賛し、その旗振りをしてきたわけですが、そのなかでこの特集は、「規制緩和」「構造改革」の路線によって何がもたらされているのかを指摘しています。

この特集の“基調報告”的な同誌編集部の「『日本復活』の陰で強まる過重労働圧力」では、トヨタ自動車とその関連企業(デンソーなど)で、労働者の深夜残業が連日続いた結果、うつ病や突然死が起きていることを紹介。その背景に、トヨタ単体の生産台数が1991年度の315万台から2005年度には386万台に増えた一方で、従業員が7万5266人から6万5798人に減り、その結果、1人あたりの生産台数が41.9台から58.7台に、15年間で1.4倍にも増えたことがあることを指摘しています。

それから、生産部門では非常勤職員の比率が急速に増大し、トヨタでは生産部門要員の4割が非正規労働者、技術部門では、デンソーやアイシン精機などグループ企業からの出向者が44%まで占めているんですって。これで次世代への技術継承をどうやってやろうというのかと。

この特集では、70年代後半以降、アメリカやイギリスで新自由主義政権が誕生し、労働時間の短縮や労働者法制の緩和・撤廃を進めたことをあげ、

「日本も英米に遅れて90年代後半、橋本竜太郎内閣以来の『構造改革』路線によって労働市場の規制緩和が強力に進められた。これが最近の『日本経済復活』につながったとの評価は少なくない。しかし、それは低所得の非正規労働者を増やすと同時に、リストラによって減らされた正社員の労働強化という副作用をもたらすことになった」

としています。

また、金沢大学の伍賀一道教授の「規制緩和という強まる“使い捨て”労働の流れ」では、現代の長時間労働が、①正社員を縮小し、パートやバイト、派遣・契約など「細切れ的な雇用」である非正規雇用を組み合わせる「弾力的な労働編成」の追求②「グローバル経済化がもたらす国際競争の激化」があることを指摘。「労働市場の構造改革」の名による労働法制の規制緩和で、正社員の長時間・過密労働が促進されていることを示したうえで、厚生労働省などが現在検討している「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、「これが現実になれば長時間労働は事実上野放しになろう」とのべています。

そのうえで、「持続可能な働き方」への転換をめざすためには、「国際的視点に立って労働基準の確立を図ることが不可欠となる」、つまり、「『権利が保護され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事』を意味するディーセントワークの実現」(ディーセントワーク=decent workというのは、1999年のILO総会が提唱した方向だそうです)に踏み出すことだと強調しています。

とくに現代日本では、過労死や過労自殺の危機にさらされる長時間・過密労働、その対極でのフリーターの増加など「労働力の使い捨て」などを内容とする「労働力浪費的雇用」を改め、「使用者による一方的な労働条件の決定を公的に規制し、労働者を保護する仕組み」、つまり「労働基準」を再確立することを提起しています。また、

「日本では労基法36条にもとづく『三六協定』(時間外・休日労働についての労使協定)があれば残業が合法化され、またサービス残業に対する労働組合の規制も弱い。労働組合自身が企業の競争力優先の姿勢から脱却できないことがその背景にある

「労働組合が『労働力浪費的雇用』に正面から対抗する視点に立つことが求められている」

と、日本の労働組合のあり方にも注文をしています。

この他にも日本労働弁護団の棗一郎弁護士による労働相談のあまりにも苛烈な事例紹介や、都留文科大学の後藤道夫教授による「ワーキングプア」(現役勤労者なのに貧困基準以下の収入しかない人たち)と格差社会についての論考も、大変読み応えのあるものでした。(スペースもないので紹介しませんが)

「構造改革」「規制緩和」マンセーの新自由主義路線による一般国民との矛盾が、労働・雇用をめぐる面でも極限に迫り、その方向転換が鋭く問われている、ということを改めて痛感させられました。まあ、「毎日」を含むマスメディアには、小泉内閣などの「構造改革」マンセーとさんざっぱら煽り立ててきたことに対する猛省も、合わせて求めたいわけですがね。

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