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2006年8月 3日 (木)

労働時間が変わらなくても利潤を濃く搾る方法②

東京学習会議の『資本論』講座、前回(7月9日分)の続きを書く前に、次の講座(30日分)が終わってしまいましたorz。前回も書きましたが、この2回のテーマは「第4篇 相対的剰余価値の生産」で、以前の「第3篇 絶対的剰余価値の生産」(とくにこの辺)で明らかにされたように労働時間を延長するのではなく、一日の総労働時間(労働日)が一定のもとで、どうやったら剰余価値を増大させることができるか、が主題になります。(この辺については、私が30日の「自主復習会」に向けて作ったレジメがこちらにありますので、よろしかったらご笑覧ください)

これは、一言でいえば、必要労働時間が縮小することで可能になります。一日の総労働時間を12時間として図に示してみると、必要労働時間■と、剰余労働時間□とが、

     ■■■■■■■■■■□□(必10時間:剰2時間)から、
     ■■■■■■■■■□□□(必9時間:剰3時間)へ、

というように、比率を変えるわけですね。これは、現実には、労働者の賃金が労働力の価値(≒生活費)以下に切り下げられる場合も数多くあるのですが、ここでは商品が価値どおりに売買される状態を想定していますので、必要労働時間の短縮は労働力の価値そのものが低下することによって、もたらされます。このためには生産力(ここでは、同じ労働時間、同じ労働量で、より多くの生産物を作り出す能力を意味します)が増大し、より少ない労働時間で労働者の生活手段が生産できるようになって、価値が低下することが必要です。

つまり、剰余価値は①労働日の延長によって生産される場合と、②労働日のうちの必要労働時間と剰余労働時間との比率の変化によって生じる場合とがあるわけです。①を「絶対的剰余価値」、②を「相対的剰余価値」と呼びます。両者の違いを改めて確認すると、

絶対的剰余価値:「労働日の延長によって生産される剰余価値」
相対的剰余価値:「剰余価値が、必要労働時間の短縮及びそれに対応する労働日の両構成部分の大きさの割合における変化から生じる場合」
    (ともに第10章「相対的剰余価値の概念」)

ということになります。

さて、ここで、今までは理論的に想定できなかった新たな事態が登場します。生産力の増大が社会全体でだいたい均等に起きれば、商品の価値がその分低下するのですが、ある資本(企業)が画期的な生産方法を発明・発見して、自分の生産力を高めることに成功した場合、どのような事態が展開するか――という問題です。

この新しい生産方法を開発した資本(企業)は、社会的平均よりも少ない労働時間で商品を生産できるので、この資本が生産した商品の「価値」は、その商品の社会的な価値を下回ることになります。しかし、商品の価値は(市場を通じて)社会的に決まりますから、この企業は、商品を社会的な価値どおりに売ることによって、あるいは、ちょっとぐらい割引きして売ったとしても、他の資本(企業)よりも大きな剰余価値(利潤)を得ることができるようになります。これを「特別剰余価値」(特別利潤)といいます。

この時、他の資本家(つまり、“出し抜かれた”企業)は「フッ。問題ない。すべて予定どおりだ」とか何とか言いながら、顔の前で両手を組んで、じーっと見ているでしょうか? 見ているわけはないですよね。当然、彼らも新しい生産方法の開発と採用に乗り出します。

また、この時開発された新しい生産方法が社会の大部分に普及すれば、商品の社会的価値そのものが低下しますから、特別剰余価値は消滅します。そこで資本家は、自分の手に特別剰余価値を獲得しようと、新しい生産方法を開発・採用する競争に駆り立てられるようになるわけです。

こうして、

「労働時間による価値規定の法則は、新しい方法を用いる資本家には、彼の商品を社会的価値以下で売らなければならないという形態で感知されるのだが、この同じ法則が、競争の強制法則として、彼の競争者たちを新しい生産方法の採用に駆り立てる」(第10章「相対的剰余価値の概念」)

ことになるわけです。

結局、商品の価値は、労働の生産力が上がるのにつれて低下し、労働力の価値も同様です。一方、相対的剰余価値は、労働の生産力が上がるのにつれて上がるわけです。

注意しておく必要があるのは、資本家は、商品を安くするために、自分の生産力を高めようとしますが、生産力を増大させることで、労働時間を短縮しようとは決してしない、ということです(それどころか、資本家は日本でも欧米でも、スキあらば労働時間を延長させることばかり考えています)。資本家の目的は、商品を安くすることで、労働力の価値を低下させ、相対的剰余価値を増やすことにあるのです。

(ちなみに、余談ですが、資本主義を克服した共同社会では、生産力の増大の成果を労働時間の短縮に振り向け、それによって人間の自由時間を拡大し、人間の能力を多面的に発達させられるようになっていくでしょう――マルクスは『資本論』第3巻第7篇「諸収入とその源泉」で、その展望について示唆しています)

では、これらがどのようにして行われるか? その具体的な方法は11章「協業」~13章「機械と大工業」で明らかにされていきますが、それはまた次回に。

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