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2006年10月 4日 (水)

「来週はサービスサービスっ!」?

いきなり何だかなあ、なタイトルですみません。先月10日に行われた東京学習会議「資本論」講座についての話を書かないまま、時間がたって、月も変わってしまいました。いえ、本当は半月近く前に3時間かけて書いたんですが、やっと完成し、アップしようとボタンを押したとたんにPCがフリーズ。バックアップを取らないままだったので、そのまま消えてしまい、以後立ち直れないまま、今にいたったわけです。

前回書いた続きとして、相対的剰余価値の生産について考えるうえでは、労働者が資本家の指揮下で働くだけでなく、集団で働くことが欠かせません。集団で働くことにより、①一人では決してなしえない「集団としての生産力」を発揮できる②労働を分割し(分業)、それぞれの部分作業が熟練・洗練されることで、全体としての作業もより迅速に行える――ことができるようになり、やがて、手工業で行われた労働は、機械制に取って代わられました。

機械と大工業についてがこの時の「自主復習会」の内容でした。レジメをアップしておきますので、ご興味がおありの方はご覧ください。(自主復習会「機械と大工業」レジメをダウンロード

ところで、機械と道具の違いって、何だと思いますか?

機械工学の入門書を読むと、「簡単な仕組みが道具、複雑な仕組みが機械」といった類の“定義”が出てきます(私が自主復習会の準備のために読んだ入門書もそうでした)。しかし、社会科学の概念としては、これでは意味不明です。

マルクスは、これらの“定義”を検討したうえで、機械が①原動機②伝達機構③作業機――の3部分から成り立つことを明らかにしました。機械制よる生産では、機械は人間には出せない巨大な力を出せるようになる一方で、生産過程で人間から独立した存在(マルクスは「客観的な生産有機体」と表現しています)として、人間を“支配”して機能するようになります。(道具は人間自身が操作しなければならないため、こうした逆転は起こりません)

ちなみに、レジメでも紹介していますが、現代の機械制工業――オートメーションの性格をどう理解するかについては、研究者の間でも見解が分かれ、論争が続いています。

さて、生産過程が機械に支配されるようになることで、資本家は機械をより徹底して使うために、労働日を延長しようとしたり、機械の速度を上げることで、労働者に同じ労働時間でより多くの労働力を支出させる(労働の強化)ようになります。先日紹介した『エコノミスト』7月25日号では、トヨタ自動車が1991年度から2005年度の15年間で、1人あたりの生産台数が1.4倍に増えたことを指摘しています。(このなかには生産性の上昇分も含まれているので、労働が1.4倍に強化されたということを意味するものではありませんが、労働強化が含まれていることは確かでしょう)

このように労働時間の延長や労働強化が行われれば、どうなるか。マルクスは、労働者の急速な疲労と消耗がもたらされること、さらに高価な機械を節約するため、労働者の生存条件、つまり安全面をも節約するようになります。

これに対する労働者の側から、自分たちを守るため抵抗・反撃として、労働運動が始まります。現在、労働基準法や労働安全衛生法をはじめとした、さまざまな労働法がありますが、これらはそうした労働運動の高まりのなかでつくられた法律です。今日のNHK「クローズアップ現代」でも、日本経団連が導入しようと躍起になっている「ホワイトカラー・エグゼンプション」が紹介されていましたが、これは無限の利潤を得ようとする資本の貪欲さが、現れたものです。「働き方の自由が拡大する」なんて誘い文句にだまされて、こんなものを認めてしまったら、エライことになります! マルクスの『資本論』は、これにだまされない“科学的な目”をつちかうためにも、現代でますます注目される必要があると思います。

それはさておき、来週の自主復習会は、「第5篇 絶対的剰余価値と相対的剰余価値」です。ここでは、資本主義社会ではどんな労働が「生産的」とされるのかが明らかにされます。研究者の間では、これにかかわって、物質的な財貨を生産せず、直接的に人間の欲望を充足する労働(いわゆる「サービス労働」)が経済学理論に占める位置づけについても、難解な論争が行われています。日常の経済用語で「サービス産業」というのがありますが、これはきわめてあいまいな用語で、マルクス経済学の概念における「サービス労働」は、これよりもっと厳密なもので、例えば運輸業や商業・金融業は除外されます。(詳しくはまたいずれ)

その自主復習会での報告に向けたレジメをつくる必要があるのですが、仕事が忙しくて、いまだにほとんど手がついていません。「サービス」論争の一方の説の“代表者”といわれる金子ハルオ先生(私の学生時代の師匠の一人です)による古典的文献『生産的労働と国民所得』(1967年、日本評論社)をネットの古本屋で入手し(長いこと探していたのよToT)、やっと最近何とか読了したぐらいです。まあテキストの範囲も短いし、何年か前に作ったノートはあるし、何とかなるかと思っていることもあるのですが………。そんなことをいって先送りしていると、ロクなことはないので、そろそろやるか。

現在は、川上則道先生の『「資本論」で読み解く現代経済のテーマ』(2004年、新日本出版社)、金子先生の『サービス論研究』(1998年、創風社)をめくり中。「サービス」論争のもう一方の側の中心の一人として知られる飯盛(いさがい)信男先生の『生産的労働の理論』(1977年、青木書店)は、ちょっと間に合いそうにないや………。あ、川上先生の本は『「資本論」の教室』(1997年、新日本出版社)ともども分かりやすいのでお勧めです。ご興味をお持ちの方はぜひ。

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コメント

 こんにちは 「資本論」昔読みました。
そう20年も前の話です。
 「搾取」という言葉、余り聞かないですねこの頃は、いまはサービス残業大流行。
新聞で書かれるから少しは減ったけど、それでも多い。やっぱ原因は、リストラで追いやった中堅労働者の変わりに派遣で間に合わせようとした後始末を労働者に求めた結果です。いまでは、毎日残った仕事を家に持ち帰りということまで行われています。
 メスを入れるなら徹底的にする。
 これが本当の労働行政だと思います。

投稿: sanroku63 | 2006年10月 6日 (金) 午後 12時27分

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