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2007年1月 9日 (火)

公開講座「『資本論』とはどんな書物か」に参加しました

東京学習会議の『資本論』講座、8日の無料公開講座「『資本論』とはどんな書物か――序文・後書きを読む」(1部~3部講座の合同)に参加してきました。序文と後書きでは、マルクスが資本主義研究で取ったスタンスと『資本論』の研究対象などについて、簡潔にのべているわけですが、これらについて、宮川彰・首都大学東京(通称「クビ大」)教授が詳しく語ってくれました。

この公開講座では120人が参加して、当初用意した机では足りなくなり、人が増えるたびに、机といすを新たに用意するという、うれしい盛況ぶりでした。メールなどで案内を送らせていただいた方々、ご協力いただきありがとうございました。m(__)m

まず、『資本論』の研究対象ですが、マルクスは『資本論』初版序文で、

私がこの著作で研究しなければならないのは、資本主義的生産様式と、これに照応する生産諸関係および交易諸関係である

近代社会の経済的運動法則を暴露することがこの著作の最終目的である

としています。宮川先生は、資本主義社会をとらえるマルクスの視点について、①資本主義社会を「自然史的過程」、つまり<生成⇒発展⇒消滅(次の新しい社会への移行)>の過程としてとらえたこと②社会の発展の程度が高いか低いかではなく、法則そのものを明らかにするのが問題だという態度を取ったこと――を強調されました。

とくに①に関しては、「第2版あと書き」でマルクスがのべた

現存するものの肯定的理解のうちに、同時にまた、その否定、その必然的没落の理解を含み、どの生成した形態をも運動の流れのなかで、したがってまたその経過的な側面からとらえ、何者によっても威圧されることなく、その本質上批判的であり革命的でもある

という弁証法の特徴を紹介され、「資本と、その立場の代弁者にとって、腹立たしく恐ろしいものだ」と力説されました。

また、②に関連して、マルクスが資本家や土地所有者、労働者の個々人について、

経済的社会構成体の発展を一つの自然史的過程ととらえる私の立場は、……個々人に諸関係の責任を負わせることはできない。個人は主観的には諸関係をどんなに超越しようとも、社会的には依然として諸関係の被造物なのである。(初版序文)

との立場を示していたことを強調され、「現代の問題でいえば、貧困の社会的な広がりを個々人の責任に解消することはできないということだ」とのべられました。個々人が貧困におちいる契機はさまざまありますが、その根底には必ず社会的な要因が横たわっている、ということですね。

宮川先生はそのうえで、『資本論』の方法にかかわる最近のニュースとして、近代経済学者で「マネタリスト」のM・フリードマンが昨年秋に死去したさいの「日経」紙上などが賛辞をあふれさせたことを紹介されました。「マネタリズム」の源流になった「貨幣数量説」について、マルクスは『資本論』第1巻第3章「貨幣または商品流通」で、「幻想」「ばかげた仮説」と痛打していますが、宮川先生は、同じ近代経済学者の宇沢弘文先生が1998年の講演で、

そういうこと(フリードマンの主張)を証明するのは、解が無数にあるのですね。ところがそれを1つだけ選んできて、それがあたかも解であるかのようにいうわけです。……フリードマンの考え方は、とんでもない状況を設定して、そこで貨幣数量説に合う結論を出していく。そういう数学の使い方というのが最近流行っている。それは全く邪道だと思うのです。(「経済学教育はいかにあるべきか」)

と批判したことを紹介し、「『勝ち組』の時流に乗った俗流マネタリストの空虚な『権威』であり、金持ちに都合のいい『理論』だ」と手厳しく批判されました。あわせて、フリードマンと近い立場で元大臣でもあるT中某教授についても批判を浴びせておられました。

質疑応答では、働かせても残業代を支払わないですまそうという「ホワイトカラー・エグゼンプション」や、いわゆる「第3次産業」の拡大といった現代的な問題を『資本論』からどう見るのか、についての質問が多く出されました。質疑応答の詳細については省略しますが、講座終了後に近所の居酒屋で宮川先生を囲んで開いた交流会でも、「講義を聴いて、受講を決めた」とか「いつか自分たちの住む街でも『資本論』の勉強会を開きたい」などと話す方々がいて、盛り上がりました。

いま、「史上最長の景気拡大」と宣伝され、大企業や高額所得者が大もうけをあげる一方で、一生懸命働いても年収が生活保護なみという「ワーキング・プア」が拡大して、NHKで何度も特集番組を放映する深刻な社会問題となっています。資本はさらに利潤をあげようと、「ホワイトカラー・エグゼンプション」を労働者に押しつけようとしています。

この横暴の根底に何があるのかを、『資本論』は暴き出し、社会がどういう方向に進むべきか、問いかけています。『資本論』は今こそもっと読まれ、もっと活用されるべき文献だとあらためて感じました。

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コメント

うーん。素晴らしい企画になったようで。
良かったですね。。。。

なんだか後悔してます。

自宅で大掃除をしてましたけどね。。

投稿: ばぶ | 2007年1月12日 (金) 午後 11時04分

我が母校の略称が「クビ大」って・・・・
(;_;)

投稿: 天婦羅★三杯酢 | 2007年1月18日 (木) 午後 03時17分

★ばぶさん、お忙しいとは思いますが、来ていただければよかったです。ご自宅は片付きましたか? 私のアパートは、全然です。ごみと本に埋もれてorz


★天婦羅★三杯酢さん
うわ! ナツカシー!! ようこそお越しくださいました。ご無沙汰しています。お元気ですか? ご商売はいかがでしょう?
もしかして、時々のぞいてくださっているのでしょうか? また気軽にお越しください^^。

>母校の略称が「クビ大」って

全く、腹立たしい限りです。

投稿: かわうそ | 2007年1月18日 (木) 午後 03時42分

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    (副題:資源維持)  先ず、(中−1)へのコメントの紹介から入る。  una:TBありがとうございました。  東京新聞経済欄に、EPA(経済連携協定)の記事がありました。オーストラリア側の要求は、小麦・砂糖・乳製品・牛肉の4品目の関税を撤廃せよ・です。もしも、これらの要求を丸呑みにした場合、食糧自給率は40%〜30%に下落するそうです。恐ろしい事ですね。  政府は、日本農業の競争力を高めるとかで、大規模農業やら会社形態農業を進めようとしています。地産地消を唱えるのに、小規模の地産をしてくれ... [続きを読む]

受信: 2007年1月10日 (水) 午前 08時21分

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