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2007年6月 9日 (土)

温室効果ガス「2050年までに半減」って……?

ドイツで開かれていたサミットで、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を「2050年までに半減させる」ことで、合意したとのことです。

「温室効果ガス、2050年半減 合意達成へ各国に重責」(Sankei WEB)

 ハイリゲンダム・サミットで最大の焦点だった温室効果ガスの排出削減目標について、各国首脳は「2050年までに排出量を少なくとも半減させるとの欧州連合やカナダ、日本の決定を真剣に検討する」ことで合意した。削減の具体的数値目標や細かい期限にはこだわらずに国際的な枠組みづくりを最優先したものだが、今後合意の実効をあげるには、中国やインド、ブラジルも加えた大排出国が、どれだけ責任を持って取り組むかにかかっている。(ハイリゲンダム 石垣良幸)
 サミット参加各国は、今回の合意を受け、京都議定書で規定していない2013年以降の「ポスト京都」の枠組みづくりを本格化させるが、課題は山積している。

これは現状に比べて、ということのようです。今年は2007年ですから、「あと43年以内に温室効果ガスを半減」というと、一見、画期的な合意のように聞こえます。しかも、これは日本がEUとともに提案したとのことで、安倍首相は協議の後に「日本の主張が認められた」と語ったそうですから、ここのところさまざまな問題で防戦一方だっただけに、天然癒し系風に「こなちゃ安倍さんすご~い!」と思う方々も、少なくないかもしれません。

ところが、この合意、よく見てみると、解せないところが多々あります。というのは、日本はもともと、EU各国などとともに、「京都議定書」を締結し、2013年までに、1990年に比べ温室効果ガスを6%削減することを公式の目標に掲げていました。いま、新聞やテレビで、さかんに有名人が登場して目耳にする「チーム・マイナス6%」というキャッチコピーは、この目標にもとづいて打ち出したものですよね。

では、その後、日本の現状はどうなのか。環境省が毎年、温室効果ガスの排出状況を公表していますが(そのサイトはこちら)、最新の2005年分(PDFファイルです)によると、現状では、「マイナス6%」どころかプラス7.8%、つまり排出量が増えてしまっているわけです。ここから京都議定書の目標を達成するためには、あと8年であわせて13.8%分、つまり毎年1.7%分を削減する必要があるわけです。

さて、今回のサミットでの合意は「2050年までに温室効果ガスの排出量を現状から半減する」というものですから、1990年対比で見ると、(100+7.8)/2=53.9%にまで削減する、という目標になります。2005年から45年間ありますから、1990年対比53.9%分を削減するには、毎年1.2%分を削減していく計算になりますね。この“年次目標”を進めた場合、京都議定書が目標として掲げた2013年までの8年間では1.2×8=9.6%ですから、現状から107.8-9.6=98.2、つまり、1990年対比ではたった1.8%分の削減にしかなりません。要するに、90年のスタート時点とほとんど同じ水準ということなのですね。

こうして見てみると「2050年までに排出量を現状から半減する」というこの合意は、結局、京都議定書で定めた目標を棚上げするだけのものに過ぎないわけです。日本政府自身が、日本の地で結んだ国際的な取り決めを守らず、温室効果ガスの排出量を増やしてきながら、こんな主張を持ち出すのは、さも排出削減をリードするかのように装うごまかしでしかありません。だまされるわけにはいきませんよ。

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コメント

トラックバックありがとうございました。低い目標値を掲げるのが、アメリカに配慮してのことでもあるというのが情けないですね。

投稿: yasuko_kanda | 2007年6月10日 (日) 午後 10時17分

 NHKだけが「安倍さんスゴい」と言わんばかりの報道をしていた.さすが政府公報メディア.
 同日の英BBC,独ZDF,仏2は,いずれもハイリゲンダムサミットがトップニュースだったけど,安倍にもCO2にもいっさい言及しなかった.同サミットでは,もっと大切な話題があったから.

投稿: Ladybird | 2007年6月13日 (水) 午後 10時19分

kandaさん、Ladybirdさん、ようこそいらっさいました&コメントをいただきありがとうございます。

アメリカに「配慮」して、こんな目標先送りを、さも中身があるかのように「提案」するのは、本当にナサケナイ限りです。

なかなか更新しなかったり、訴求対象がきわめて狭いネタ的コトバが入っていたりしますが、お気軽にお立ち寄りください。m(__)m

投稿: かわうそ | 2007年6月14日 (木) 午後 04時08分

>なかなか更新しなかったり、訴求対象がきわめて狭い
>ネタ的コトバが入っていたりしますが、
どんだけ~(笑)

べ、べつにネタに釣られてコメントしたわけじゃないんだから!こんなネタにつっこむのはアタシくらいしかいないし、それで仕方なくやってるんだから!そこんとこカンチガイしないでよ!

・・・という返しについて、今後も「ツンデレ」と言っていいかどうか、まさに京都議定書よりも熱い論争が(ごく一部で)繰り広げられているわけですが。

投稿: kiddy | 2007年6月15日 (金) 午前 02時40分

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