« 映画「夕凪の街 桜の国」公開間近! | トップページ | 参院選で自民党が歴史的な大敗 »

2007年7月22日 (日)

若者の「生きづらさ」の大本を考える対談

「しんぶん赤旗」の「学問・文化」のページで、16、17、18日付の3回にわたって、“1人でも入れる”労働組合「首都圏青年ユニオン」書記長の河添誠さんと、ワーキングプアなどについて発言を続ける元右翼で作家の雨宮処凛(あまみや・かりん)さんとが、対談しています。タイトルは「青年よ 立ちあがれ」。何かスゴいタイトルですが、読んでみて、面白い対談だと思いました。

雨宮さんがワーキングプア問題に関心を持ったのは、1本の新聞記事からだったそうです。

雨宮 私が労働問題にかかわるきっかけというか、何だか日本がおかしくなっていると思ったのが、去年の4月でした。岐阜で30代のフリーターが漫画喫茶に1カ月泊まったのに、所持金は16円しかなくて、料金15万円を払えずに逮捕されたという新聞記事です。私たちの生活がホームレスと隣接しているんだと分かって、この問題に関心を持つようになりました。

現在は労働組合への加入率も2割を切り、先日紹介したように、3人に1人がバイトや派遣など非正規雇用です。残業代ナシの長時間タダ働きやいきなりの首切り、「偽装請負」など違法行為も横行しています。

雨宮 フリーターの人たちの取材を通して感じるんですが、デモとか団体交渉ができるとか、労働組合が作れるとか何も知らない。そもそも自分が労働者だってことも知らない。本当に何も教えられずに丸裸で社会に投げ出されているんだなって、自分を含めて実感します。

……私の弟も過労死しそうになったんです。大手量販店の正社員で、仕事は朝8時から深夜1時、2時まで。長時間労働で死にそうになるという現実を間近に見て、びっくりしました。これではホームレスを前提としたフリーターか、過労死を前提にした正社員かという選択になってしまいます。

若者がこうした状態におかれる大元には、何があるのか。打開の方向はあるのか。世間での議論を見ると、中高年世代と若年世代との間の「断絶」に原因を求める意見や、現状に絶望するあまり、「戦争にでも期待するしかない」という議論まで見られます。お2人の対談は、この問題に進みます。

河添 いまのフリーターや非正規雇用の増加を「ロストジェネレーション」とか「ポストバブル」の世代論にするのは非常に問題がある。

雨宮 世代論にすると終わった話になってしまいますよね。

河添 非正規の拡大は政策的に誘導されている。いま景気回復局面だけど、雇用が元に戻るかといえば、絶対元に戻らない。今度は労働ビッグバンだといってもっと悪くなる。

(中略)
雨宮 この前も40代のフリーターから「本当に生殺しで、戦争起こってほしい」とメールがきました。逆に、今まで右翼の愛国的な方に行っていた人が、これ【注:この問題を特集した『論座』1月号】を読んで「今まで愛国で自分をごまかしていたけれど、これからは使い捨て労働力である自分を認めます」というのも聞きます。

河添 それは面白いですね。

雨宮 このまま行けば自殺だけど、戦争に行けば恩給と名誉が得られるというのも、切実だなと思いましたね。

河添 生きていることに自信が持てないし、誰にも評価されない、それがこれから先も続くんじゃないかという絶望の深さですよね。

雨宮 「生きづらさ」とか自殺とか、精神的不安定の問題ばかりやっていたんですが、去年初めてプレカリアート(不安定な労働者=非正規雇用)という言葉と出合って、新自由主義という敵がはっきりしました

では、どう打開をはかるか。ネット上の発言を見ると、非正規雇用の待遇改善を求める主張などに対して、「お前らが怠けた結果だよwwww」とか「そんなこと言ってる間に、職探ししたら?」みたいな主張を、時々見かけます(そう書く人の多くが、何かのキッカケで自分も同じ状況に落ち込みうる立場にいるのですが)。お二人は、果たして、本当にそうなのか? ということを考えていきます。

雨宮 いま世の中が優しくないことを感じますね。多重債務者やホームレスは全然自己責任じゃないのに、彼らは甘えているという人がまだいる。社会全体に余裕がない。

河添 ほんとうにそうですね。貧困を今度の選挙でどこまで争点にできるか。ぼくたちも参加している反貧困キャンペーンはそれが最大の目的です。どの政党、候補者にもまず実態を知ってほしい。貧困は大変ですね、格差は大変ですねと形式的にいうきれいごとではすまない

雨宮 フリーターやニートにモラルがないようにいわれますが、企業・財界こそモラルがない。違法行為をしている企業はどんどん摘発してほしい。経団連の御手洗会長(キヤノン会長)なんて今すぐ捕まってもいいんじゃないか。悪いことをしている企業が保護されて、末端で働く人がどうして大変な思いをしなければいけないのか。

国民の間に広がっている格差と貧困をどう解決するのか。この問題は、最終盤を迎えた参院選でも、憲法問題などとともに、大きな争点になっています。

雨宮 なんでこんな派遣会社の天下になっているのか。99年に労働者派遣法を自由化(製造業をのぞく)したのが一番大きいですよね。そのとき民主党はもちろん、社民党も賛成していたのは、知らなかったですね。

河添 社民党はいまも2003年改正(製造業に労働者派遣を解禁)の前に戻せと言うだけなんですよ。99年改悪に反対という考えではない。

雨宮 99年改悪に共産党だけが反対していたのは知らなかった。(一連の労働法制の規制緩和の)全部に反対している(笑い)。当時はまだ派遣がいいものというイメージがありましたね。

河添 失業問題は大きくなっていたけれども、貧困という見え方ではなかった。

(中略)
河添 最低賃金や生活保障の問題は生きるために最低限必要ですが、もう1つ必要なのは労働時間の規制です。共産党の緊急提案(3月)のなかに、1日の労働時間規制をする、最低11時間の連続休息時間を確保するとあります。つまり夜12時まで働いたら、翌日は午前11時前には出勤しない。これはEU(欧州連合)もそうなんです。民主党も同じ政策をだしています。共産党はこの間の労働者派遣法の規制緩和に対して正しい判断をしてきたので、さらに具体的な規制を実現するネットワークを作る努力をしてほしい。ぼくらも運動の中で現実を変える力関係をつくっていきたいと思います。

マルクスは『資本論』第1巻23章で、労働者の一部の過度労働と、それ以外の部分の失業状態(「強制的怠惰」と表現しています)とが資本を富ませる条件となるとのべました。派遣やアルバイト社員は、企業にとって、必要な時には投入でき、不要な時は簡単に「調整」(要はクビ)できる便利な労働力として使われ、企業はこうした手段も使いながら、利潤を大幅に増やしてきました。

参院選では、貧困や格差の拡大について、与野党とも「課題だ」とか「何とかしなければ」としていますが、具体的には、労働・雇用面では非正規雇用の正規化や労働時間の短縮など労働法制の再強化は、どうしても欠かせないと思います(他にも保育制度の充実をはじめ「仕事に出やすくする環境」づくりも必要になるでしょう)。

労働法制の規制緩和を進めるため、巨額の企業献金をバラまき、政策決定の場にまで乗り込んできた財界は、そんなことは絶対にやりたがらないでしょうから、それを説き伏せてでも進める気があるのか――選挙では、そういったことを見て政党・候補者を選んでいく必要があると思います。

また、参院選の後、こうした施策の実現に向けてどう努力していくのか。河添さんの提起した「ネットワーク作り」は、政党や労働組合、団体、個人などの連携・協力をどう構築していくか、ということだろうと思いますが、この点も重要でしょうね。そんなことを思いながら、何度も読み返した対談でした。

|

« 映画「夕凪の街 桜の国」公開間近! | トップページ | 参院選で自民党が歴史的な大敗 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73960/15838915

この記事へのトラックバック一覧です: 若者の「生きづらさ」の大本を考える対談:

» 二大政党制は格差社会の母 [BLOG BLUES]
書評の結びは、「日本でもそう遠くない」。 5月の終りの日曜日だったと思います。毎日新聞の書評欄からの切抜です。 これが、冷戦勝利後の米国社会の必然的展開だったのだろう。 もともとその内部に、左派勢力を持たない二大政党制国家ですからね。 東側をぶちのめした以上、対抗措置である修正資本主義なんぞ、 ちゃんちゃらおかしくって、やってられませんよってか。 震える魂、カート・ヴォネガットは言った。アメリカに社会主義を! 米国の格差社会は、ブッシュJr.政権の誕生とともに、訪れたわけで... [続きを読む]

受信: 2007年7月25日 (水) 午後 03時33分

» 貧困を語るときの盲点 [花・髪切と思考の浮游空間]
右であろうと、左の立場からであろうと格差社会を論じる書物が書店に並ぶようになって久しいが、メディアをとおして格差が伝えられても、めずらしく感じることもなくなった。それほど、格差が言葉として熟してきたということだろう。そして、最近も、生活保護を「辞退」し悲惨な結果に結びついたことを知らせる報道にふれた人も少なくないだろう。まさにこの事例は貧困とはひとたび生活の歯車が狂うと、誰もが直面するものでもあることを示した。これを、私たちはどのようにとらえたのだろうか。格差社会はよくない、ただされないといけないと... [続きを読む]

受信: 2007年7月26日 (木) 午前 05時09分

» 「○○組」派遣会社 [ストップ !! 「第二迷信」]
 以前、「岡山市にはネットカフェ難民がいない?」という、林議員の調査がありました。 アルバイトで食いつなぐような「難民」だと、岡山なんかでネットカフェ難民せずに、バイト料の高い大阪に出てくるんじゃないか?という推測をしたのですが、 いま、「最低賃金」と...... [続きを読む]

受信: 2007年7月28日 (土) 午後 07時50分

» 労働者派遣法 [労働者派遣法]
労働者派遣法についての詳細情報をお伝えしています。 [続きを読む]

受信: 2007年7月30日 (月) 午後 09時47分

» 選挙が終わって・・憲法は? [関係性]
 自民党の小泉大勝への抵抗が、今回の安部大敗であった。  気持ちのワクワク感を開票速報から得たが、テレビ報道から見る限り、1人区での民主党の訴えはかつての自民党の姿に瓜二つに見えてきた。それでも、地方の弱小農家に多大の希望を与えた民主党のマニフェストには期待がかかる。そして、その実践に期待をかけたい。  ところが、翌日になって、各党の議席数が確定したのを見ながら、「九条護憲派」の議席数がどうなったかが不安になってきた。  もし、「九条改憲派」の議席数が増えたとしたら、安部改憲勢力が勝利したも同然であ... [続きを読む]

受信: 2007年8月 1日 (水) 午前 10時36分

« 映画「夕凪の街 桜の国」公開間近! | トップページ | 参院選で自民党が歴史的な大敗 »