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2007年11月24日 (土)

「市場経済」をトータルにとらえる――なぜ今『資本論』なのか

なぜ今『資本論』か
東京学習会議の資本論講座ガイダンスに参加してきました。とはいえ、いろいろ果たさざるを得ない別用があったために、お知らせに書いた午前中の宮川彰、今宮謙二両先生のお話は聞けずに、話をきちんと聞けたのは山内清先生だけでしたが。(恩師の宮川先生には、会場でお目にかかることはできましたが)

山内先生は、現在、「構造改革」「成長力を強化する」などの名による「新自由主義」政策が行われ、労働法制の切り下げや法人課税の緩和をはじめとして、企業が利潤を獲得するのに障害となる規制が取り払われるだけでなく、福祉・医療や教育など公共サービスが行われてきた分野までもが企業の利潤獲得競争の舞台とされていることを指摘。「利潤を推進力とする資本主義をむき出しにした、“先祖帰り”の政策が取られている」とのべられました。

また、「社会主義の初期段階をめざす」としている中国でも、「現代的市場体系の健全化」という目標を掲げているとして、「日本も中国も、市場経済の存在そのものが改めて問われている」とされたうえで、「日本では『資本論は古くなった』といわれるが、市場経済そのものをトータルに分析した経済学の本は、資本論のほかにはない」と力説。学校で、ケインズや「近代経済学」をも教えておられることをふまえての実感として、「『資本論』は読むごとに新鮮さを示していると感じる」と強調されました。

そして、「近代経済学」が「資本が利潤・利子を生み、労働が賃金を生み、土地が地代を生む」という現象(これを《三位一体的定式》といいます)をそのまま不動の前提として受け止めて経済現象を「解明」しようとしているのに対して、『資本論』は《商品と貨幣》にまでさかのぼって、その本質を明らかにしており、だからこそ、これらの経済現象を明らかにすることができるのだ、とのべられました。

そのうえで、『資本論』を読む上での困難さと“読みやすさ”について、大学を一度卒業して社会に出られたときに初めて読んだときのエピソードを紹介され、「毎日45分ずつ読んで、第1巻を読み終わるのに4カ月、全3部読み終わるのに2年半かかった」と脅しをまじえながらも、「『資本論』は内容が凝縮してはいるが、実は経済学の知識が全くない人にも分かるように書いてある。例えば、商品とは何かを理解するのに、貨幣についての知識は必要ないし、商品が理解できれば、次には貨幣が、その次には資本が理解できるようになる。丹念に読んでいく覚悟さえあれば、資本主義の全体像が理解できる本なのだ」と強調。

「『資本論』は理論の書だから、読んだからといって、すぐに明日の展望がハッキリ見えるようになるとか、社会を変える元気が出る、ということはないが」としつつ、『資本論』を読んでいくことの大切さを説かれました。

このガイダンスでは、今年初めて講座で『資本論』第1部に挑戦されたお二人の方が、ご自身の体験を振り返られました。私と年齢が近い男性のMさんは、それまで経済学なんて勉強したこともなかったそうですが、「『新自由主義』や『ワーキング・プア』といったテレビや新聞で見聞きする例もまじえて『資本論』を解説してくれるので分かりやすい」とのべておられました。

私よりはちょびっと上の世代(?)の女性のSさんは、以前勤めておられた会社が業績は上がったのに、社員の待遇は悪くなり、やがてせっかく入社した新人も辞めていくようになり、ご自身も辞めざるをえなくなったそうです。Sさんは「こういうのがおかしいんだということを、勉強できる場がある」と誘われたとのことで、毎回の講義でグループごとに分かれて講義内容について討論して、ほかの受講者の方々と理解を深められた、とおっしゃっていました。

いま、日本では新自由主義による“市場原理マンセー”な風潮がまかり通っていますが、この路線のもとで経済的・社会的格差が拡大し(「大したことない」という人もいますが、拡大しているのは事実ですし、それによるひずみも広がり始めていますわね?)て、是正の必要性が叫ばれるようになりましたし、ごみ問題や温室効果ガスの排出による地球温暖化の問題もちっとも解決への道筋が見えないままです。これらの現象が何ゆえに生じざるをえないのか、それを大本から解決する道筋はあるのか――こうしたことを考えるうえで、やはり『資本論』を読んでいくことを、私もお勧めしたいのよ、と思ったわけです。

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コメント

この場に求める方がいけないのかもしれないが、なんか初老感たっぷりだなぁ。

投稿: まなぶ | 2007年11月27日 (火) 午前 02時00分

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